3.上柴怒田の火山灰層

東麓
コース
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古富士火山の噴火の歴史を刻んだ地層

 小山町上柴怒田(かみしばんた)は、御殿場市と小山町の境界近くに位置します。ここでは、古富士火山、さらに日本全土に影響を与えた鹿児島湾での噴火の歴史を、美しく積み重なった火山灰層から読み取ることができます。
 古富士火山が噴火を始めたのは、約10万年前。上柴怒田地区の道路ぞいの崖では、約4万~2万年前の度重なる噴火の際に降下した黒色ないし黒褐色の火山灰や火山れきの観察ができます。一枚一枚の火山れき・火山灰層の間には、風化した火山灰や土壌からなる薄い褐色の層ができています。
 この崖の中部にある火山れき層の間に、細かな白色の火山灰の薄い層がはさまっています。この火山灰層は、鹿児島湾北部で約2万8千年前に発生した、火砕流を伴う巨大噴火によって噴出・降下したもので、姶良(あいら)丹沢火山灰と呼ばれ、北海道を除く日本全国での分布が知られています。この火山灰を指先で擦り合わせると、シャリシャリした独特の感触があります。これは噴火の際にマグマが急冷してできた火山ガラスのかけらが多量に含まれているためで、洗浄すると無色透明の細かい泡のかけらのような粒が観察できます。
 この火山灰はどこにでも残っているものではありませんので、上柴怒田のように良い保存状態のまま発見されたこの地層は、学術的にも大変貴重なものといえます。

広範囲に及んだ古富士火山の影響

 現在の富士山の土台にはおよそ20~10万年前に噴火を開始した小御岳(こみたけ)火山があり、その南斜面から、およそ10万年前に古富士火山が噴火を始めました。
 古富士火山が噴出した火山灰は、偏西風に乗って関東一円に降り積もり、関東ローム層と呼ばれる粘土質の地層の母材の一部となりました。また古富士火山から流れ出した溶岩流や泥流は、当時南に向かって流れていた古酒匂川を埋め立て、流路を東に変えて現在のように相模湾に注ぐ酒匂川が誕生しました。
 古富士火山は次第に大きな火山へと成長し、標高2500mあまりの高さにまで成長したと考えられています。その後、約1万年前頃までにマグマの性質が変化し、新富士火山の時代に入りました。
 古富士火山の山体は、数度にわたって大規模な崩壊を起こしました。その際に崩れた大量の土砂が「古富士泥流」と呼ばれるものです。水を通しにくい岩質のため、地下水はこの地層の上に蓄えられ、富士山麓に豊富な湧き水をもたらしています。

姶良カルデラ噴火について

 上柴怒田の地層で見つかった姶良丹沢火山灰(AT火山灰層)を噴出した噴火は、どのような規模や性質のものだったのでしょう。
 姶良丹沢火山灰(AT火山灰層)は、現在の鹿児島湾北部にある直径約20kmの海底カルデラ(姶良カルデラ)が28000年前に噴火した時の火山灰です。桜島は、このカルデラの縁に後から成長した火山です。この噴火の規模はまさに破滅的なもので、火砕流・軽石・火山灰などの形で噴出したマグマの総量は、富士山が誕生以来10万年をかけて噴出した全マグマの量に匹敵します。
 姶良カルデラから噴出した火砕流は南九州全域を覆い、中には100m以上の厚さで地表をおおったものもあり、その一部は現在のシラス台地をつくっています。また、姶良丹沢火山灰は、北海道を除く日本全国に分布しているため、28000年前という年代を示す基準の地層として利用されています。さらに日本海や、2000km以上離れた太平洋の海底からもこの火山灰が見つかっています。
 上柴怒田の崖では、姶良丹沢火山灰が古富士火山の火山れきにはさまれることから、両火山が同時に噴火していたことがわかります。

周辺散策MAP

現地までの交通

電車

小田急電鉄・JR御殿場線御殿場駅より、タクシー利用で約15分

(1)東名御殿場ICより国道138号を山中湖方面へ、富士平原ゴルフクラブ手前を右折
約10km約15分
(2)中央自動車道河口湖ICより東富士五湖道路経由、須走ICより2km 約3分

上柴怒田の情報はここでも調べられます

■日本大学 文理学部 地球システム科学科

http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/quart/fuji-p/fuji-field/fuji-outcrop/kamishibanta.html
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■交通などのお問い合わせ

小山町役場 TEL.0550-76-1111(代)