2.太郎坊のスコリア層と二ツ塚

東麓
コース
2

一面をスコリアに覆われた「太郎坊」

 御殿場口登山道のスタート地点として知られるのが「太郎坊(たろうぼう)」です。一面が宝永4年(1707)年の噴火で噴出したスコリア(黒色で気泡の多いガラス質の火山れき)に覆われ、ここから富士山頂に向けて、樹林帯はほとんど見られません。
 「太郎坊」という地名は、富士山に住む大天狗・太郎坊権現の名に由来すると言われています。現在は、標高1400m前後の一帯がこの名で呼ばれています。
 富士山頂方向を見上げると、斜め左手に側火山の二ツ塚、さらにその上方に宝永山を望むことができます。御殿場口登山道の七合目から新五合目までの厚い火山砂れきに覆われた約7kmにわたる一帯が「大砂走り」です。一歩進むたびに足首ほどまで砂れきの中に沈み、数mの歩幅で走るように進めることから、人気の高い下山道となっています。一方でこの一帯には雪崩が起こりやすいため、冬季は閉鎖されます。かつて市営のスキー場が設けられたこともありましたが、雪崩の被害が多く廃止されました。
 また1966年には、英国海外航空(BOAC)の旅客機が太郎坊付近に墜落するという痛ましい事故も起きています。現在はその犠牲者を偲ぶ慰霊碑が建てられています。

噴火の歴史を記録する地層

 太郎坊の駐車場脇にある小さな谷間の崖には、富士山の噴火の歴史を示す火山れき・火山灰の層が美しく積み重なっているのを観察することができます。最も上層にあるのが宝永噴火で噴出した宝永スコリアで、その厚さは5m以上に及びます。この噴火は富士山の噴火史の中で最大級のもので、1707年12月16日から約2週間の間にマグマ量に換算して0.7立方kmに及ぶ火山れき・火山灰が火口から噴出し、上空の西風に流されて東方一帯を覆いました。また宝永噴火の49日前には、東海沖から南海沖にわたる震源域をもつ大地震(宝永東海・南海地震、マグニチュード8.7)が発生しており、その余震が続く中で富士山が噴火しました。
 宝永スコリアの下に、30枚ほど重なる層の上部にあるのが、二ツ塚の噴火で堆積した二ツ塚スコリア。その下位には湯船第2スコリアがあります。これは約2200年前に、富士山の山頂火口から噴出したものであり、それより新しいスコリアは全て側火山からの噴出物です。湯船第2スコリアの下位にあるのは、3000年ほど前の火山れき・火山灰層、そして最も下位に1万年ほど前の三島溶岩が観察できる場所もあります。このように、この崖の地層を観察することで、約1万年間にわたる富士山の噴火の歴史をふりかえることができます。

約2000年前の噴火で生まれた「二ツ塚」

 二ツ塚は、太郎坊駐車場の西1.5kmほどの場所に並ぶ2つの側火山です。西側の上塚が標高約1900m、東側の下塚が標高約1800m。両者とも、噴火で放出されたスコリアが降りつもってできた「スコリア丘(きゅう)」というタイプの小火山で、同じ割れ目火口の上に同時にできたと考えられています。太郎坊駐車場から徒歩1時間ほどの行程で至ることができます。山頂からの素晴らしい眺望は、登山者の人気となっています。

近年の太郎坊

大規模な雪代災害(東麓コース1を参照)によって、ここで紹介した見事な地層断面が観察できるようになったのですが、出現から時間も経過し、その後の風雨などで流れ出した土砂などもあり、現在は少し地層の観察がしにくくなっています。

周辺散策MAP

現地までの交通

電車

JR御殿場線御殿場駅から富士急行バス御殿場口新五合目行き 約40分「太郎坊」下車(7・8月のみ運行)

東名御殿場ICより国道138号、246号、富士山スカイライン経由で約20km 約30分

太郎坊の情報はここでも調べられます

■御殿場市ホームページ

http://www.city.gotemba.shizuoka.jp/

■国土交通省富士砂防事務所

http://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/public_info/fujiazami/fujiazami44/fujiazami_02.html
富士山西側の湧水量などの資料があります。

■「山口の火山」

http://volcano.instr.yamaguchi-u.ac.jp/fuji.html
山口大学総合科学実験センターに勤務される
理学博士 永尾 隆志さんのHP
2003年8月に日本火山学会・日本地震学会・静岡県が主催した「第4回地震火山こどもサマースクール」に参加したときの詳細な記録を見ることができます。

※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

■交通などのお問い合わせ

御殿場市役所 TEL.0550-83-1212(代)
富士急行御殿場営業所 TEL.0550-82-1333