1.富士山グランドキャニオンと雪代

東麓
コース
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雪代がつくった「富士山グランドキャ二オン」


富士山東裾の側火山の一つ「小富士」の東側山稜を下ったところに、いくつもの火山灰堆積層が断崖絶壁のようになって連なる、通称「富士山グランドキャニオン(和製グランドキャニオン)」があります。崖は長さ約300m、高さは平均約50mで、最も高いところでは70mを超えます。
この地層は、過去数万年分の噴火や土石流の堆積物からなり、約2900年前に起きた富士山東斜面の山体崩壊による地層もはっきりと見ることができます。それが、「雪代(ゆきしろ)」や、流水によって長い年月にわたり浸食され続けた結果、現在のような崖ができました。
ところで、「雪代」というのは富士山での独自の呼び名で、正式には「スラッシュ雪崩」といいます。富士山では11~12月や3~4月ごろの低気圧や前線の通過にともなって、激しい雨と急激な気温上昇があったときによく発生します。
雪代は、標高約2300~2500mの、ちょうど雪が雨に変わるくらいの地点で発生します。はじめは溶け出した雪と雨が混じった水分の多い雪崩ですが、流れ落ちるに従って山腹の斜面にある砂や岩石を巻き込み、土砂混じりの雪崩となります。流下する途中で雪がすべて溶けてしまうと、流動性の高い土石流となって流れ続けます。ときには山麓の集落にまで到達し、村を埋めつくしてしまうこともあるため、麓の人々は昔から雪代をおそれてきました。
富士山グランドキャニオンでは、その雪代のエネルギーの大きさを、かいま見ることができます。

雪代発生箇所は南東~北斜面が多い

富士山で雪代が発生しやすいのは、御殿場口から吉田口にかけての南東~北斜面で、地表面が火山噴出物でおおわれ、植物のほとんど生えていないところです。火山噴出物は水がしみこみやすいため、夏に降った雨はすぐに地下にしみこみ、地表面を流れることはほとんどありません。 しかし、冬には噴出物にしみこんだ水が凍結するため、それ以上水がしみこめなくなり、その上に雪が積もります。この状態で気温が急上昇し雨が降ると、水はほとんどしみこめないまま、大量の雪を溶かして崩落させることになります。これが雪代発生のしくみと考えられています。

天保年間の雪代災害

江戸時代も終わりに近い1834年(天保5年)5月に発生した雪代災害は、富士山麓の土砂災害の中でも、ことに大規模なものとして記録に残っています。
この年は4月はじめから夏のような猛暑が続きました。この暑さで富士山に積もっていた万年雪に異変が生じたのです。大雨にともなって万年雪が急に溶けだし、雪のかたまりが立木を倒し、岩石をころがしながら山麓を襲いました。南西麓の富士・富士宮、北麓の富士吉田の一帯は泥の海と化し、潤井川も川底が一気に上昇してしまいました。人馬や家屋の被害は甚大で、農民たちの一揆にもつながりました。
この時の雪代は、現在の新幹線の新富士駅あたりまで達していたようです。

昭和以降の雪代災害

昭和47年(1972年)5月には、雪代による大土石流が発生しました。
5月1日、5日の両日に300mmを超える降雨があり、これに異常高温が重なったため、大沢の源頭部で雪代が発生しました。これにより、源頭部に堆積していた土砂が一気に流下し、大土石流となったのです。土砂は大沢扇状地に大量に堆積し、さらに泥流は潤井川を経て河口の田子の浦港にまで達して、相当量の土砂を港に積もらせました。

近年では、平成4年(1992年)年12月、平成7年(1995年)年3月、平成8年(1996年)3月、平成16年(2004)12月、平成19年(2007)3月にも雪代が発生し、山梨県側の富士スバルラインや静岡県側の富士山スカイラインが寸断されるなどの被害がでました。


御殿場登山口の起点となっている太郎坊付近には、高さ10mあまりの崖があり、富士山の噴出物が層になって堆積している様子が観察できます。
この崖も富士山グランドキャニオンと同じく、雪代に削られてできたと考えられています。

周辺散策MAP

現地までの交通

東名高速御殿場インター下車、国道138号線を山中湖方面に約20分進み、ふじあざみラインを五合目方面に左折 6km進んだところに駐車スペースあり 駐車場より徒歩にて五合目方面に600m(6.6kmの標識あり)進み、標識を目印に右折後、約7分

富士山グランドキャニオンと雪代の情報はここでも調べられます

■小山町観光協会

http://www.wbs.ne.jp/bt/kankooyama/kankospot.htm
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