2.富士山南東山腹の側火山群

南麓
コース
2

側火山が際立って多い富士山


 側火山(そっかざん)とは、大きな火山体をもつ火山において、山頂火口(中心火口)以外の山腹や山麓で噴火が起きた場合につくられる小火山のことです。
 側火山をもつ火山は少なくありませんが、富士山は側火山の数が際だって多く、その数は70以上といわれています。さらに、その多くが山頂を中心に北西-南東方向に偏って分布し、分布限界が中心火口から15?もの遠距離に及ぶという特徴があります。
 富士山の側火山の多くは、お椀を伏せたような形をしています。これは、噴火の際に火口の周辺にスコリア(気泡をたくさん含む暗色の火山れき)などの火砕物が積もってできた山で、火砕丘(スコリア丘)と呼ばれます。このほか、はっきりした丘にならずに帯状の盛り上がりや溝のような窪みの地形としてとして認められるもの、火口だけが列をなしているものなど、さまざまな形の側火山があります。

鑵子山は富士山の側火山

 鑵子山(かんすやま、標高1306.0m)は、富士山の南東山腹にある側火山のひとつです。東側にくっついて並ぶ、同じく側火山の「黒塚」とともに、上空から見ると、まるで古代の古墳のような形をしています。
 鑵子山も、他の多くの側火山と同じ火砕丘であり、噴火の末期に溶岩流が山腹から流れ出したため、南側の山体が少し崩れた形になっています。
 鑵子山の断面が見える崖を観察すると、山の中心から外側に向かって、溶結したスコリア(溶結とは,噴火時の高温によって噴石や火山れき同士がくっつき合うこと)、溶結しかけたスコリアや火山弾を含む粗粒スコリア、溶結していない均質のスコリアへと順に移り変わる様子を見ることができます。
 鑵子山の北西側には、浅黄塚(1577m)、腰切塚(1496m)、東臼塚(1454.3m)、南東側には平塚(1099.2m)などの側火山(いずれも火砕丘)が分布しています。鑵子山とあわせて訪ねてみるのもおもしろいでしょう。

側火山の配列がしめすもの

 富士山の側火山は、北西-南東方向に偏って分布しています。さらに、富士山の山体そのものが、上空から見ると北西-南東に伸びた楕円形をしています。これらの方角の偏りは、富士山の地下にかかる力の向きと大きく関係しているのです。
 伊豆半島の土台は、今よりもずっと南方の海底で噴出した火山群によってできています。この海底火山の高まりがフィリピン海プレートの北上に伴って北進し、約100万年前に日本列島と衝突したのです。フィリピン海プレートは伊豆半島の両側にある駿河トラフと相模トラフで日本列島の下に沈み込んでいますが、伊豆半島は火山の熱によって暖められ軽くなっているために沈み込むことができず、本州を強く押し続けていると考えられています。
 このため、富士山付近の地殻には、伊豆半島に押される方向の割れ目ができやすくなっています。富士山のマグマが上昇する際につくられる割れ目も、北西?南東方向のものができやすく、結果として側火山の配列も北西?南東方向のものが多くなっているのです。こうした分布の偏りをもつ火口から溶岩流がくり返し流れた結果、北西?南東方向に長径をもつ楕円形をした富士山の山体がつくられました。

周辺散策MAP

現地までの交通

富士山南東山腹の代表的な側火山である、鑵子山はフジヤマリゾートぐりんぱを目標として訪れることができます。

フジヤマリゾートぐりんぱまでの交通

東名高速御殿場ICから富士山スカイライン又は南外周道(大野原)経由で30分
●東名高速裾野ICから南外周道(大野原)経由で25分
●東名高速富士ICから十里木経由又は富士山スカイライン経由で50分
●中央高速河口湖ICから東富士五湖道路・富士山スカイライン経由で50分
 JR御殿場、三島、富士各駅からバス運転

富士山南東山腹の側火山郡の情報はここでも調べられます

■山梨県環境科学研究所 富士山・火山写真展HP

http://www.yies.pref.yamanashi.jp/kazan/pic/index.html

※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。