1.宝永火口

南麓
コース
1

山頂火口より大きい宝永火口

 富士山の南東斜面、標高約2100mから3150m地点にかけて、3つの大きな火口が北西-南東方向に並んでいます。これが、富士山の噴火史上もっとも激しい噴火のひとつであった宝永噴火(1707年)でできた宝永火口です。
 3つの火口は山頂側から順に宝永第1、第2、第3火口と呼ばれています。一番大きい宝永第1火口の直径は約1?あり、富士山の山頂火口より大きいです。
 宝永噴火は第2・第3火口からの軽石噴火で始まりました。その後第1火口からスコリア(たくさんの気泡をふくむ暗色の火山れき)を放出する噴火が約半月続いて、ようやく終息しました。この噴火では、わずか半月の間に0.7立方キロメートルものマグマが噴出したと考えられています。火山灰は、遠く離れた江戸の町にも降り続き、厚さで数センチメートルも積もりました。噴火が激しい時には江戸の上空は真っ暗となり、昼間でもろうそくの灯をともさなければならないほどでした。
 すり鉢状の巨大な宝永火口が、その噴火のすさまじさを物語っています。

岩脈郡が観察できる第1火口

 3つの火口の中で一番大きな第1火口。山頂側の火口壁では、古い時代の溶岩流の積み重なりと、それらを縦に貫く岩脈群を見ることができます。岩脈は、地表に出ようとして地下の割れ目を通過中に、そのままの形で固まったマグマです。
 また第1火口の底では、噴火の最末期にできたと考えられるパンケーキ状のスパター丘(飛び散った溶岩のかけらが半分とけた状態でベタベタと積み重なった丘)も半分崩れた状態で見ることができます。

いびつな形の第2、3火口

 第2、3火口は、これらの火口ができた後の宝永山の隆起によって北東側の火口縁が変形してしまい、いびつな形をしています。
 第1火口もふくめた宝永火口の底には、さまざまな形や大きさをした火山弾・火山れきや、富士山のマグマ溜まり内で固まってできた深成岩(ハンレイ岩)の岩片などが散在しています。

噴火中に盛り上がった宝永山

 宝永火口の北東側に沿った形で、赤褐色の岩を頭に載せた小山があります。この山が宝永噴火の際に誕生した宝永山です。宝永山は一見すると、宝永噴火で放出された火山弾や火山れきが火口の周辺に積もってできたようにも思えますが、それは正しくありません。
 宝永山を形作る地層は、1万年以上前の古い噴火によって降り積もった、「赤岩」と呼ばれる赤褐色の細かな火山れき・火山灰の地層です。宝永噴火以前には地下に埋まっていたと見られる古い地層が、宝永火口が開いたときの地表の変形で持ち上げられ、小山になったと考えられます。

「土地家所蔵絵図」で見る宝永火口のできるまで

 江戸時代に東海道の宿場町であった原(現在の静岡県沼津市原)で、代々「書役」(役場の記録係)をつとめていた土屋家に、宝永噴火の模様を描いた3枚の絵図が伝わっています。3枚とも富士山南側の同じ場所から描いたもので、時間とともに噴火がどのように推移したのかがわかる貴重な史料です。

(1) 昼の情景
 富士山南東斜面の5合目付近から噴煙が立ちのぼっています。噴煙の高度があまり高くなっていないので、噴火が始まって間もない頃の情景と思われます。
 説明書きには、1707年(宝永4年)12月16日午前11時ころに地震があり、富士山がこの絵のように焼け出て、その後16日間にわたって焼けたとあります。

(2)夜の情景
 火口直上に赤熱した火柱が描かれています。夜間であるため、噴煙の中の高温部分がこのように見えたのだと思われます。
 説明書きには、毎夜このように見え、とくに12月16日の焼け始めの夜には火柱が大きく、翌朝未明に焼け灰が一度だけ降ったとあります。また、毎夜稲光のように伊豆の天城山のあたりまで光渡ったとも書かれています。

(3)焼け納まり(噴火直後)の情景
 宝永火口と宝永山が、はっきりと描かれています。
 説明書きには、1708年1月1日午前4時ころ、大きくひとつ鳴った、その日は山が晴れ渡り、宝永山ができていた、とあります。
 この1日未明の噴火を最後に宝永噴火のすべてが終了したのです。

所有者/沼津市 土屋博氏、資料提供/静岡県立図書館 歴史文化情報センター所蔵

周辺散策MAP

現地までの交通

【富士宮口新五合目まで】

御殿場インター下車、富士山富士宮口新五合目(富士山スカイライン終点)へ(約60分) 500台収容駐車場あり

バス

(7月~8月のみ)JR富士宮駅発「富士宮口五合目」行き乗車(約40分)終点

【富士宮新五合目より】

徒歩にて宝永第二火口、宝永第一火口を経由し宝永火口へ(往復所要時間約3時間)

宝永火口の情報はここでも調べられます

■「富士山自然探訪」

http://www.fuji-web.net/fuji/index.html
御殿場市在住の映像作家 勝又幸宣さんのHP
宝永火口のほかにも、富士山に関するさまざまな映像を見ることができます。

■「山口の火山」

http://volcano.instr.yamaguchi-u.ac.jp/fuji.html
山口大学総合科学実験センターに勤務される
理学博士 永尾 隆志さんのHP
2003年8月に日本火山学会・日本地震学会・静岡県が主催した「第4回地震火山こどもサマースクール」に参加したときの詳細の記録を見ることができます。

※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

■交通などのお問い合わせ

御殿場市観光協会 TEL.0550-83-4770
富士宮市 文化課 TEL.0544-22-1187