2.青木ヶ原樹海と溶岩トンネル

北麓
コース
2

貞観噴火の溶岩の上に生まれた「青木ヶ原樹海」

 富士山北西麓に広がる青木ヶ原樹海は、平安時代の貞観噴火(864年)で流れ出た青木ヶ原溶岩の上に生育した、約3000ヘクタールの大森林です。 
 青木ヶ原溶岩の表面は凹凸が激しく、土壌に乏しくて耕作に向かないため、長いあいだ開拓されないままでした。そういう事情が、ツガ、ヒノキなどの針葉樹と、フジザクラ、カエデなどの広葉樹が密生する、ユニークな森林を生むことになりました。樹木がうっそうと茂っているため、昼なお暗く、地表の溶岩や倒木などには、びっしりと濃緑のコケが生えています。
 よく、樹海に入ると出られなくなってしまうのは、溶岩が強い磁気を帯びていて磁石が狂うからだといわれていますが、実際は溶岩によほど近づけなければ、磁石が狂うことはありません。ただし、樹海の中は凹凸が激しくてまっすぐ歩くことが困難なうえ、目印となるものがないため、方向感覚を失って迷いやすいのは事実です。このため森の中に分け入るのは大変危険ですが、東海自然歩道や精進湖口登山道などの整備された道を通れば問題はありません。
 青木ヶ原樹海は植物だけでなく、野鳥の宝庫でもあり、溶岩トンネルや溶岩樹型などのおもしろい地形も数多く見ることができます。ハイキングの基本を守って樹海の自然を満喫してください。

粘り気の小さな溶岩がつくった溶岩トンネル

 青木ヶ原樹海の中には、たくさんの溶岩トンネルがあります。溶岩トンネルとは、溶岩の粘り気が小さく流動性が高いときに、溶岩流の内部にできやすいトンネル状の構造のことです。流れ出した溶岩は表面だけが冷えて固まっても、内部はまだどろどろの状態で、溶けた部分だけがそのまま流れ去ってしまいます。このためトンネルのような空洞ができるのです。溶岩トンネルの中には全長4kmにも及ぶ長いものもあり、西湖蝙蝠穴(さいここうもりあな)、富岳風穴、鳴沢氷穴などは、そういう長い溶岩トンネルの一部だと考えられています。

レーザー光線で新火口や「溶岩じわ」を発見!

 青木ヶ原樹海では、これまでは空中写真を参考に地形図を作っていたのですが、うっそうと繁る樹海の下の地面がどうなっているのか、空中写真からはよくわからない部分がたくさんありました。そこで国土交通省の富士砂防事務所では、飛行機から樹海のすきまを通して地面にレーザー光線を当て、それが跳ね返ってくる時間を計測して青木ヶ原樹海の正確な地形図を作成しました。その結果、新たな火口の存在が確かめられたり、溶岩流がつくった細かな地形が詳しくわかったりと、興味深い発見がたくさんありました。
 青木ヶ原溶岩を噴出させた火口としては、これまで長尾山・氷穴火口列・石塚火口の3つの火口が確認されていましたが、今回の調査で、石塚火口の西北西約1.5kmに新しい火口が見つかり、周辺の地名から「下り山火口」と名づけられました。この火口は、最近3200年間に噴火した富士山の火口の中では最も北に位置するもので、次の富士山の噴火を考える上で重要な発見です。さらに、貞観噴火では「下り山火口」と「石塚火口」を結ぶ火口列と、「長尾山」と「氷穴火口列」を結ぶ火口列の、2つの火口列から溶岩が流れ出たこと、2つの火口列を合わせた長さは約5700mにも及ぶことがわかりました。

 一方、今回の調査では、いままでの地形図でははっきりわからなかった、溶岩流がつくるさまざまな地形をとらえることができました。
 そのひとつが「溶岩じわ」と呼ばれる地形です。これは溶岩流が流れるにしたがって、流れの方向と直交した方向に伸びたしわがたくさんよってできる地形です。溶岩じわの構造を見れば、溶岩がどちらの方向に流れたかが分かります。
 こうした調査を重ねることによって、富士山の過去3200年間でもっとも大規模な溶岩流噴火であった貞観噴火の正確な規模や推移が判明しました。

溶岩トンネル「西湖蝙蝠穴(さいここうもりあな)」

 西湖蝙蝠穴(さいここうもりあな)は、青木ヶ原樹海の中に数多くある溶岩トンネルの中でも大きいものの1つです。「蝙蝠穴(こうもりあな)」の名前は、洞穴内の温度がほかの洞穴に比べて高く、かつてはコウモリの越冬の場となっていたことからついたといわれていますが、近年はコウモリの数も減っているそうです。
 穴の内部では、溶岩鍾乳石や溶岩棚など、溶岩がつくった特異な地形を観察することができます。
 溶岩鍾乳石は、溶岩トンネルの天井や壁から、鍾乳石のように垂れ下がった溶岩をいいます。溶岩トンネルができた後、トンネルの壁をつくっている溶岩が再溶融して垂れ下がり固まったものです。

 溶岩棚は、溶岩トンネル内を流れた溶岩流が残した跡であり、かつてそこを流れた溶岩流の水位を示しています。ここでは、2段または3段になった溶岩棚を見ることができます。
 なお、蝙蝠穴(こうもりあな)は、冬期(12月1日~3月19日)は閉鎖され、入洞はできません。

周辺散策MAP

現地までの交通

中央高速河口湖インターから国道139号を本栖湖方面に鳴沢道の駅を過ぎ、富岳風穴信号右折、コウモリ穴指示標識左折すぐ約30分

バス

富士急行線河口湖駅下車より、西湖・青木ヶ原線(巡回 河口湖駅行き レトロバス)「西湖コウモリ穴」バス停下車 約35分
※蝙蝠穴に入るには、入場料¥300が必要です

青木ヶ原樹海、溶岩トンネル、西湖蝙蝠穴(さいここうもりあな)の情報はここでも調べられます

■ネイチャーガイドクラブ(富士河口湖町公認)HP

http://www.mfi.or.jp/tanken/

■山梨県環境科学研究所 富士山・火山写真展

http://www.yies.pref.yamanashi.jp/kazan/pic/index.html

※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

■交通などのお問い合わせ

富士河口湖町役場 TEL.0555-72-1111
鳴沢村役場 TEL.0555-85-2311