5.国土交通省富士砂防事務所と火山砂防事業

西麓
コース
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富士砂防事務所の設置

 富士山の西側山腹にある大沢崩れでは、毎年約15万立方メートルもの土砂が崩れています。この土砂はいったん中腹部に溜まったあと、大雨や雪解け水によって一気に土石流となって麓へと流出し、田畑や民家を埋めたり、下流の潤井川の河床を上昇させ、洪水を引き起こしたりすることを繰り返してきました。
 このため、下流域での土砂災害を防ぐための扇状地での砂防が検討されることになり、昭和44年(1969年)に富士宮砂防出張所が設置され、国の直轄砂防事業が始まりました。そして、翌45年に富士砂防工事事務所(現・富士砂防事務所)が発足したのです。
 現在では、大沢扇状地での対策や土石流の監視のほか、大沢崩れ源頭部の調査工事や、南西麓に数多くある野渓(南西野渓)の土石流対策、富士山の噴火活動に関する調査などもおこなっています。

大沢扇状地での砂防事業

 大沢崩れがこれ以上拡大するのを工事等によって直接防ぐのは、技術や経費の問題に加えて、環境保全という側面から考えても、現時点では非常に困難です。しかし、たとえ土石流が発生しても、それが下流に流れないようにすることで災害発生を抑えるのは可能です。
 こうしたことから大沢扇状地では、流下した土石流を扇状地内で分散・堆積させたり、すでに扇状地内に大量に堆積している土砂を固定させたりするためのさまざまな事業が行われ、効果をあげています。
 大沢扇状地には、地形的に砂防堰堤を設置できる場所がないため、導流堤で人工的に堆砂空間を確保し、延長約4km、最大幅約1.1kmに及ぶわが国最大級の遊砂地を設置しました。
 さらに、堆積した土砂を取り除く工事をおこない、取り除いた土砂は、土地改良や道路・公共施設の基盤材に利用しています。

監視システムで土石流をいち早くキャッチ

 大沢川及び南西野渓において発生する土石流から地域を守るために、雨量計や渓流監視カメラ、ワイヤーセンサーなどを設置し、リアルタイムで監視しています。また、火山災害対策としてCCTVカメラ等による火山監視システムの構築についても検討してます。

砂防施設が土石流をキャッチ

 平成12年(2000年)11月21日午前3時ごろ、大沢川で観測史上最大級の土石流が発生しました。これは、大沢崩れの谷底に堆積した土砂が、低気圧に伴う大雨によって土石流となり流出したものです。
 このとき大沢扇状地に流れ出た土石流の量は、およそ28万立方メートルと推定されています。しかし、この土石流は大沢扇状地に設けられた遊砂地および沈砂地にすべてキャッチされ、それより下流へ流れることはありませんでした。
 この土石流の様子は監視カメラによってとらえられ、土石流のすさまじさと砂防施設の効果が、マスコミで報道されました。

南西山麓での渓流被害対策-南西野渓の砂防

 富士山麓には、俗に「八百八沢」といわれるほどたくさんの渓流(野渓)があります。ふだんは水の流れはありませんが、大雨時や雪解けのころには土砂を大量に含んだ水が激しく流れることがあります。
 富士山の南西麓に位置する富士宮市と富士市は、野渓からの土砂による災害を過去に何度も被ってきたことから、砂防事業に着手しました。
 沈砂地工や砂防えん堤などの整備を中心に、猪の窪川、足取川、弓沢川、風祭川などで工事が進められています。


 富士山と砂防に関する情報発信と交流の場として、平成11年(1999年)に富士砂防事務所1階にオープンしました。解説パネルの他、火山れきなど富士山の噴出物の展示なども行われています。所蔵ビデオを見ることもでき、職員と来訪者の交流の場として活用されています。

土・日・祝祭日は休館

周辺散策MAP

現地までの交通

東名高速富士インター下車、西富士道路から国道139号線へ、登山道入口交差点を左折100mで事務所看板を目印に右折、右手に見えるアンテナの立った建物 (富士インターより約25分)

電車

JR富士宮駅よりタクシーで約10分

国土交通省富士砂防事務所と火山砂防事業の情報はここでも調べられます

■国土交通省富士砂防事務所

http://www.fujisabo.go.jp/index.html
※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

■交通などのお問い合わせ

富士砂防事務所(静岡県富士宮市三園平1100)
TEL.0544-54-5221(代表)