3.大沢扇状地

西麓
コース
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開墾できなかった広大な扇状地


 富士山の西側には山頂の剣が峰の北側付近から標高2200mのあたりまで、ぱっくりと開いた傷口のような谷があります。これが大沢崩れと呼ばれる谷で、最大幅約500m、最大の深さ約150m、延長約2100mにわたってのびています。
 この大沢崩れの下方、標高900m付近から600m付近にかけて扇形に広がっているのが大沢扇状地で、扇の要にあたる部分には段丘ができています。
 大沢扇状地は、長い年月にわたって大沢崩れから流れ出した大量の土砂がつくった地形です。約500ヘクタールという広大な土地ですが、長い間、農地などとして利用されることはありませんでした。大沢崩れの下流にあるので、大雨が降ったり雪崩が起きたりするたびに土石流が発生し、扇状地に流れ落ちてくるためです。その土砂の量は毎年平均約15万立方メートルにものぼります。それだけでなく、地盤をつくる溶岩層に水がしみこんでしまうため、農業用水として利用できる表流水がえられず、この土地は開墾できなかったのです。
 現在では、大沢扇状地に土石流を食い止めるためのさまざまな砂防施設や、砂防樹林帯が整備されています。

標高差約3000mを一気に流れ落ちる大沢川

 大沢崩れに源を発し、大沢扇状地を流れているのが大沢川です。富士山頂から麓まで、約10kmの距離を一気に流れ落ちる急流です。その標高差は約3000mもあります。勾配も急で、山頂では45度近くになります。大滝より下流では、岩樋(いわどい)と呼ばれる大きな溝を通って大沢扇状地へ下ります。
 大沢川の地盤の大半は水がしみこみやすい溶岩層なので、川といっても普段は河道があるだけで水の流れは見られません。それが融雪期や豪雨期になると、大量の土砂が水と混じって土石流となって流れ、麓に襲いかかります。
 大沢川は、大沢扇状地を経て潤井川(うるいがわ)と名を変え、富士宮市と富士市の市内を流れ、駿河湾に注ぎ込んでいます。




 大沢崩れから流れ落ちてくる土石流の被害を防ぐために、大沢扇状地には土砂をためる遊砂地が設けられています。これは延長約4km、最大幅約1.1kmという、日本では最大級の砂防施設です。
 ここにたまった土砂は、大きな石を取り除いた後に運び出されて、土地の改良や道路建設の盛土材、海岸の浜辺の造成などに利用されています。いわば土砂のリサイクルです。
 大沢扇状地の砂防施設には、遊砂地の導流堤の上などに遊歩道が設けられていますので、見学に行ってみましょう。

砂防樹林帯の遊歩道を散策してみよう

 大沢扇状地には土石流を防止するためにさまざまな施設が設けられていますが、これらの施設は、単に防災のためだけでなく、市民が富士山の自然や砂防について学んだり、自然を楽しんだりするための場としても活用されています。
 土石流の勢いを弱めるために設けられた砂防樹林帯には、ケヤキ・コナラ・クヌギなどの木々が生い茂っています。その砂防樹林帯の中には遊歩道がつくられ、扇状地の末端にある潤井川の護岸まで延びています。美しい木陰を散歩するのも気持ちがよいものです。
 富士砂防事務所が主催する「大沢扇状地自然観察会」で見学することができます。

周辺散策MAP

 大沢扇状地がよく観察できる場所としては、お中道の滑沢(なめさわ)などがありますが、雲などがあるとまったく観察ができなくなってしまいます。
 したがって、大沢扇状地を尋ねてみたい場合、このページで紹介している、富士砂防事務所が主催する「大沢扇状地自然観察会」にご参加いただくことがもっともお勧めです。

大沢扇状地の情報はここでも調べられます

■国土交通省富士砂防事務所HP 事業紹介

http://www.fujisabo.go.jp/jigyou/sj-senjyouchi.html

※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

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