5.柿田川と三島の遊水群

南麓
コース
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地域に恵みをもたらす富士山の湧水

 富士山は、約1万年~8000年前の間にたびたび起きた噴火で、大量の溶岩(旧期溶岩)を流出しました。この時期の溶岩の分布をみると、かなり広い範囲の土地が溶岩流の下敷きになったことがわかります。北東側では山梨県大月市付近、南西側では富士市や富士宮市の市街地や富士川の河原にまで到達しました。南東側では箱根山と愛鷹山の間を流れ、JR三島駅付近や柿田川上流部まで到達しました。この南東側のものが「三島溶岩」と呼ばれています。
 こうした溶岩流出は短期的に見れば大規模災害といえますが、長期的な視点で考えたとき、溶岩流が与えた様々な恵みが見えてきます。そのひとつが、溶岩流が地下の水路を確保したために、その末端から湧き出る大量の地下水です。富士山麓からは、一日の総湧水量500万トン余りと言われる地下水が常に湧き続けています。南東麓、静岡県駿東郡清水町にある柿田川湧水をはじめ、南西麓では富士宮市浅間神社の湧玉池や白糸の滝、北麓では山梨県忍野村の忍野八海などが有名です。また富士五湖も湖底の湧水がよく知られています。
 富士山の湧水は、麓で暮らす人々に様々な恵みを与えています。飲料水や農業用水ばかりではありません。富士山麓には多くの企業の巨大工場が数多く誘致・建設されていますが、こうした施設でも地下水を工業用水として利用しています。

柿田川をはじめとする三島の湧水郡

 静岡県三島市などでは、町中に湧き出す地下水(三島湧水群)を上手に街の景観づくりに取り入れ、魅力的な街づくりが行なわれています。この湧水群の中で最大規模のものが、柿田川湧水です。国道一号線のすぐ南側にある湧水地を水源とする柿田川は、その長さがわずか約1200m。日本で最短の一級河川としても知られ、大小数十ケ所の湧出口から、東洋一といわれる1日約120万トンもの地下水が湧き出ています。その美しさは、「名水百選」「二十一世紀に残したい日本の自然百選」など数々の認定を受けています。
 柿田川周辺では、年間を通じて平均15度程度に保たれる水温や、美しい水質などにより、独特な生態系が維持されています。そこに見られる動植物は実に多彩で、カワセミ、ヤマセミ、カワウ、マガモ、ヒドリガモなどの鳥類、アマゴ、アユ、アユカケ、ウグイなどの魚類、サワガニ、テナガエビなどの甲殻類、ミドリシジミ、ウラギンシジミなどの蝶やゲンジボタル、ヒガシカワトンボ、アオハダトンボといった昆虫類などが生息しています。またミシマバイカモ、ヒンジモなどの珍しい植物も見られます。特殊な自然条件下でしか育たない貴重種も多く、環境庁「ふるさといきものの里」の認定を受けている動物もいます。
 また昭和61年には、川の保護・保全とコミュニティ広場の確保を目的とした柿田川公園が開園。園内の第1・2展望台からは、水が涌き出る「わき間」を見ることができ、湧水広場では、実際に水に足を入れて湧き水の冷たさを体験できます。
 このほか三島湧水群では、菰(こも)池、楽寿園の小浜(こはま)池なども名所として知られています。

富士山の湧水のメカニズム

 富士山には、雨や雪が降り、蒸発散を考慮しても相当量の地下水が蓄えられていると考えられています。それらは長い時間をかけて溶岩内部をつたい、麓にまで流れ下ります。湧水地の分布を溶岩流の分布と比較すると、湧水地の多くが溶岩流の分布の末端付近にあることがわかります。
 溶岩流は、噴火した時は1000℃以上の高温なので、溶岩流の表面と下底が急に冷えると、ガサガサに破砕されます。一方で中心部はゆっくり冷えて緻密(ちみつ)に固まりますが、溶岩が冷却した際に数多くの収縮割れ目が刻まれ、地下水を通したり蓄えたりすることができます。さらに溶岩流の内部には、溶岩トンネルと呼ばれる空洞ができることがあります。溶岩トンネルは、溶岩流の外側が冷えて固まった後に、まだ流動性を保っていた内部の溶岩がさらに先に流れ出てしまった結果、残された空洞です。
 一見、水など通さないように見える溶岩流も、実は空洞や隙間だらけであり、その内部に大量の水を蓄えたり、通過させたりできるのです。溶岩流は、富士山の雪解け水や降雨を効率よく山麓まで運ぶ、水道管のようなシステムでもあるのです。
 三島溶岩は、このような溶岩の層が7層ほど重なり、厚さ30mほどの良好な透水層を形成しています。しかも溶岩の下層にある古富士火山泥流の表層は水を通さないため、富士山や御殿場地方に降った雨や雪は溶岩流の中を地下水となって流下します。

周辺散策MAP

現地までの交通

電車

JR三島駅より東海バスサントムーン経由沼商行き・沼津港行き・沼津駅行き・柿田川循環バス約13分「柿田川湧水公園前」下車徒歩2分または
「西玉川」下車徒歩5分

東名高速沼津ICより国道1号線を箱根方面 約6km 約15分

柿田川湧水の情報はここでも調べられます

■三島市観光情報

http://www.city.mishima.shizuoka.jp/kanko_index.html

■デジタル柿田川資料館(沼津河川国道事務所)

http://www.cbr.mlit.go.jp/numazu/kanogawa/kakita/profile/profile-top.html

■清水町

http://www.kakitagawa.tv/shimizu-t/
※HPに関する情報は、2009年2月現在のものです。HP製作者等の都合・事情等によって閉鎖・更新されるなど、ご覧になれない可能性もございますことをご承知おきください。

■交通などのお問い合わせ

三島市役所 TEL.055-975-3111
清水町役場 TEL.055-973-1111
清水町観光協会 TEL.055-981-8238